第3講 金融の自由化と不安定性を見る 講師:平井俊顕
第 3 講 金融の自由化と不安定性を見る 1. はじめに この 30 年間の世界経済の動向に最も大きな影響と方向性を与えてきたのは「市場にすべてを任せる」という「ネオ・リベラリズム」(サッチャリズムやレーガノミクス)であった。政府による経済介入は効率性を阻害し発展を妨げる、規制は可能なかぎり撤廃し構造を改革すべし、という思想である。ネオ・リベラリズムの信条に基づいて、金融、資本、労働の分野での自由化が、文字通りグローバルなスケールで進行してきた。 そのなかでも最も重要なのが金融の自由化である。本講では、金融の自由化がどのように進められ、それがどのように世界経済を不安定なものにしてきたのかをアメリカを主たる対象に検討する。 最初に、この 30 年間にアメリカで金融自由化がいかにして実現していったのかをフォローし ( 第 2 節 ) 、続いて世界金融システムが金融の自由化によっていかに不安定なものになっていったのかを見ることにする ( 第 3 節 ) 。さらに、金融自由化が世界全体にどのような影響を及ぼすことになったのかを 3 つの側面からとらえる ( 第 4 節 ) 。 2. アメリカの金融自由化 ― 「グラス = スティーガル法」の換骨奪胎化と 「グラム = リーチ = ブライリー法」 概要 ― 1933 年に施行された「グラス = スティーガル法」 ( 以下、 GS 法と略記 ) は、長きにわたりアメリカの金融システムの根底を規定する法であった。 1920 年代のアメリカは金融的不正・投機の横行した時代であり、そのことが世界の金融不安、そして大不況の到来に大きな責を有することがルーズヴェルト...